武器輸出三原則撤廃で、東海地域の「死の商人」はどうなるのか
武器輸出三原則を撤廃し、輸出自由化する新原則(防衛装備移転三原則)が閣議決定され(日本平和新聞4/5付報道)、軍事産業地帯である東海地方はますます危険な状況となっています。
武器輸出に向けた動きが強まり、具体的なものとしては次のような報道がなされています。①トルコと戦車エンジンの共同開発、②新型戦闘機F35の共同生産への参加、③オーストラリアへの潜水艦輸出などです。
とりわけ愛知県、東海地域にとって、重要となっているのが新型戦闘機F35の問題で、すでにアメリカ、イギリスなど9カ国で共同生産を行うこととしており、その組み立てを三菱重工業小牧南工場で行う予定となっています。F35生産には、日本企業がレーダー、エンジン、胴体など25種類の部品生産にかかわり、防衛省は国内企業の三菱重工、IHI、三菱電機の三社と契約しています。13年度予算では、最終組み立て検査を行う三菱重工業に約639億円、レーダー部品を製造する三菱電機に約56億円の契約締結をしています。
防衛装備移転三原則が閣議決定された2日後、政府が発表した軍事産業への振興策の中で、F35に関しては「国内企業の製造参画を戦略的に推進」とした上で「将来的にアジア太平洋地域の維持・整備拠点を設置することも視野に、関係国と調整に努める」と明記しました。拠点は機体製造を担当する三菱重工小牧南工場(愛知県豊山町)に設ける方向で米国と協議すると報道(中日新聞4/3付)されています。問題なのは、米国と一体となった生産活動にとどまりません。在日米軍機やF35の導入がなされるオーストラリア、シンガポールなどアジア太平洋地域の「維持・整備拠点」を愛知に設置しようとしているのです。そうなれば、三菱重工小牧南工場に隣接する小牧基地と県営名古屋空港の位置づけは一変することとなるでしょう。
また日本がアメリカと開発中である「SM3ブロック2Aミサイル」次期迎撃ミサイルは、2018年の実戦配備を目標にしていますが、これも三菱重工業が関わっています。
現段階で、総合的に政府が狙うのは、救難機や輸送機、哨戒機などの輸出です。レーダーが搭載されているためこれまで輸出禁止されてきた救難飛行艇US2、新型輸送機C2などが検討されています。東海地域の関連では、レーダー技術を三菱電機、C2開発を川崎重工岐阜工場などで行っています。
さらには、次世代戦闘機「ATD-X」(先進技術実証機)を2016年目標に開発を三菱重工飛島工場で行っており、2014年にも試験飛行が行われる予定となっています。これが行われればアメリカ、ロシア、中国に次ぐステルス戦闘機の開発国となってしまいます。
三原則撤廃後、早速動きが出てきています。迎撃ミサイル「PAC2」を製造する三菱重工業に対して、米企業レイセオン社から輸出要請が出されました。輸出対照となるのは、ミサイルの位置を把握し、誘導するためのセンサーで、その部品を組み込んだPAC2が米国から第三国へ再輸出される懸念が出てきます。政府からの輸出が承認されれば、三原則撤廃を受けて以降、初めて事案となります。
これまで、軍事産業の世界ランキング(2012年、ストックホルム国際平和研究所)で、三菱重工は29位(約30億ドル)、川崎重工51位(約19億ドル)、三菱電機54位(約16億ドル)と巨額の富を手にしてきました。一方で武器輸出三原則の制限により、販売先は主に自衛隊となり会社の売上高に占める武器関連の比重は小さく、1割程度となってきました。今回の撤廃で、世界中に武器を売り込みロッキードマーチン(約3600億ドル)やボーイング(約2760億ドル)のような世界的「死の商人」を目指そうとしているのです。
憲法を破壊する防衛装備移転三原則は、撤廃することが求められます。