愛知弁護士会 憲法週間記念行事 ~集団的自衛権の議論にはリアリズムが必要~
5月18日、愛知県弁護士会と名古屋市の共催による憲法週間記念行事「みらいのために 東アジアの平和を築く」が開催されました。
第一部では進藤榮一筑波大学名誉教授が「東アジアの平和と日本国憲法」と題して講演し、第二部は進藤さんと名古屋大学名誉教授の森英樹さんが対談を行いました。
【進藤榮一さんの講演】
進藤さんは、昨年出版された岩波新書「アジア力の世紀」の著者であり、東アジア共同体問題で論陣を張ってきた研究者です。講演では、兵器の近代化と経済的に緊密な相互依存関係が広がっている中で、21世紀は、国家間の戦争が「引き合わない」世紀となりつつある中で、現代の戦争が先進国間の戦争というよりは途上国に対する大国の軍事干渉となっていると指摘しました。
安倍政権の進める集団的自衛権行使容認は、アメリカによる途上国戦争の加担者になることにつながる危険性があることを教えてくれました。
【森英樹さんとの対談】
中国の最近の南シナ海での蛮行や軍備増強をどう見るかという会場質問を紹介しながら、東アジアの平和構築の重要性について討議。進藤さんは、中国の軍事費が伸びているが、経済成長による影響が大きく、国内総生産に占める軍事費の割合は2%強であること、空母「遼寧」は 専門家の間では「屑鉄」と評されているが、中国の戦力は質的な面で大きく立ち後れていること等を指摘し、過剰に中国の軍事的脅威を強調することは問題であると述べました。森さんは、安倍総理の歴史認識、慰安婦問題や靖国参拝等がアジア諸国の日本に対する不信を強め、緊張を強める要因となっていることを指摘しました。
対談の後半は集団的自衛権の行使容認を求める安保法制懇の報告書について討議。森さんは、同懇談会は、結論ありきの人選で中立公正なものでは全くなく、14人のメンバーの中で憲法学者は一人しかない等、「有識者」による専門的検討とは言えないと批判し、憲法9条のもとで集団的自衛権の行使が認められるという答案を書いた受験生は司法試験も合格しないのではないかと述べました。憲法9条はウクライナや南シナ海での動向を見るなら理想主義に過ぎないかという意見があることについて、森さんは、野田聖子自民党総務会長が、集団的自衛権の問題では「殺し殺されるというリアリズムを語る必要性がある」と発言したことを紹介し、進藤さんは、「理想を語って何が悪いか。政治家があまりにも理想を語らないから、現状はどんどん悪くなっている」と述べました。