「イスラム国」による蛮行を糾弾する
2015年2月12日 愛知県平和委員会理事会
過激武装組織「イスラム国」は、湯川遥菜さんに続き、「人質」としていたジャーナリストの後藤健二さんを殺害した映像を公開した。私たちは、戦闘に何の関係もない民間人の命を弄び、自らの要求が受け入れられないからと言って殺害した、卑劣で野蛮極まりないこの暴挙に対し、断固として抗議する。
今回のような悲劇を繰り返さないために、この間の日本政府の対応を検証し、今後の基本的な対応姿勢を確認しておくことが必要と考える。基本的な立場として、日本政府は、憲法にもとづき、法と司法、非軍事的なあらゆる手段を動員した国際的包囲網と連携して、暴力の連鎖を断ち切り、暴力の温床となっている不平等や格差、貧困を根絶する努力など、非軍事的側面から問題の解決をめざすことが必要である。武力攻撃による事態の打開という手段をとれば、新たな蛮行の口実を与えることになる。すでに顕在化している報復の連鎖を断ち切ることこそが求められる。
この点で、安倍政権には、今回の事件を誘発した重大な責任がある。政府は、「イスラム国」による殺害警告が公開される数ヶ月前から、後藤さんらが「イスラム国」に拘束されている事態を認識していた。それにもかかわらず、中東諸国を歴訪し「ISIL(イスラム国)と戦う周辺諸国に、総額で2億円程度、支援をお約束します」と発言した。こうした姿勢が「イスラム国」を刺激し、挑発となったことは明らかである。安倍首相がその危険性をどのように認識し、こうした行動に及んだのかを明らかにし、その適切性を検証すべきである。さらに、「人質」として身代金が要求される事態においては、自衛隊による救出などに不用意に言及し、「挑発を続けている」と解釈された可能性も否定できない。事件後も安倍首相は、「罪を償わせる」などと敵対心をむき出しにした発言を繰り返しており、報復の連鎖を生み出しかねない。
今回の事態を悪用して、安倍首相は海外での邦人救出のための自衛隊を派兵や武器使用の法整備、有志連合の軍事行動への後方支援などに言及しているが、武力による対応は問題の解決にならない。
殺害された後藤健二さんは、中東やアフリカなどの取材を通じ、子どもなどの弱者の権利を守ることを訴えてきた。戦争や戦場では、敵も味方もなく無実の民間人が犠牲にあう。
中でも、子どもたちなどの弱者が最もその被害を受けている。私たちは、後藤さんが伝えようとしたこの事実にこそ、今一度目を向ける必要がある。「邦人救出」や「報復」を口にすることは、その姿勢に逆行するものである。
テロと紛争を根絶し、問題を解決するための国際的な議論を進めるためにも、憲法9条の精神に沿った平和的外交的な手段による事態の解決に向けて努力することの大切さが改めて明らかになったと考える。