朝鮮高校生就学支援金不支給違憲国家賠償請求裁判 ~「無償化」除外は、生徒らの人格権・学習権侵害~
2月4日(火)名古屋地裁において、朝鮮高校生就学支援金違憲国家賠償請求裁判が行われ160名余が参加し、傍聴は約80名でした。裵明玉(ぺみょんおく)弁護士にこの裁判の争点などを寄せていただきました。
愛知朝鮮高校の生徒らが、朝鮮学校の「高校無償化(公立高校の授業料無償化と私立高校生への就学支援金支給)」からの除外は差別であるとして、国に慰謝料を求める国家賠償請求訴訟を名古屋地裁に提起して1年になります。
「高校無償化」は、教育の機会均等を目的として、外国人学校の生徒にも適用された点で画期的な制度でしたが、国交のない台湾系の中華学校も対象とされた中で、朝鮮学校だけが除外されたことは不当な政治的差別です。民主党政権時代、「高校無償化」は、政治外交上の配慮によらず教育上の見地から決するとして、朝鮮学校を「無償化」するための審査が続けられましたが、朝鮮半島での砲撃事件や産経新聞の報道などを理由に審査が引き延ばされ、安倍自民党政権は、日本人拉致事件が未解決であることなどを理由として、成立後すぐに朝鮮高校「無償化」の根拠規定を削除し、朝鮮学校への審査も打ち切りました。
このような生徒には何の責任もない政治外交問題を理由とする除外は、他の外国人学校の生徒が国家間の外交問題にかかわらず就学支援金を受給していることとの関係で、憲法の平等権侵害に当たります。また、朝鮮高校の生徒は、植民地時代に奪われた朝鮮民族の文化と歴史を学び、朝鮮人として成長する権利を有しており、朝鮮学校への偏見を助長した「無償化」除外は、生徒らの人格権侵害、学習権侵害に当たります。訴訟では、これら憲法の定める人権侵害の救済を求めています。
本訴訟は何よりも、子どもの学習権という普遍的な人権が、外国への制裁名目や一部世論に迎合する形で侵害されたことの異常さを、真正面から認めさせるためのものです。
教育は、表現の自由などの重要な人権を実質的に行使する基礎的な条件を作り出すものであり、大人の都合で侵害されることを許してはなりません。声をあげにくいマイノリティの人権侵害は、人権の重要性自体を毀損するものであり、ひとたび許すとどこまでも広がる恐れがあります。
政府が戦争のできる国づくりを目論む中、弱者を犠牲にして敵味方思想を社会に根付かせようとする行為を「今」、食い止める必要があります。
訴訟は4月15日に第6回口頭弁論を迎えます。今後とも、人権と平和を志す皆様のご支援をお願いいたします。