《書評》『「戦争する国」許さぬ自治体の力』 片岡拓一 ~憲法の第2章「戦争の放棄」と第8章「地方自治」は一対~

「外交、防衛は国の専管事項だ。自治体の行政にはなじまない。」などとして自治体職員、行政も腰が引けている感じがします。

昨年11月に刊行されたこの本はそんな主張に明快に答え、より積極的に自治体には憲法に謳う平和的生存権を保障する責務があることを明らかにしています。

まず、第1部では晴山一穂専修大学教授が第2次安倍政権の動きに対し地方議会から反対の意見書が続いたこと、昨年9月の名護市議選で基地受け入れ反対市議が過半数を占めたことなどを示し、国民と安倍政権の矛盾はより深まっており、地方自治体とも対立せざるをえないところまで追い込まれていると指摘しています。続いて名護市長、岩手県一戸町町長のインタビュー、また長野県阿智村の前村長が戦前満蒙開団の移住を村が進めた結果、多数の犠牲者、中国残留孤児を生んだ痛苦の歴史をのべ憲法を生かした自治体について考察しています

第2部では小林武沖縄大学客員教授が明治憲法になくて、現憲法にあるのは第2章戦争の放棄と第8章地方自治だとのべて「政府の行為によって再び戦争の惨禍をこうむることのないように」地方自治体は政府の歯止めとして地方自治権を保障されていると「平和事務」の根拠を示し、その発揮をと励ましています。

差し迫った地方選挙や今後の自治体活動の指針としてぜひこの一冊をお勧めします。

編著 小林武他 / 発行 自治体研究社 / 定価 1111円+税