「特別な教科道徳」の狙いは何か

育鵬社自由社の教科書採択を阻止する運動を中心的に担っている「教科書市民の会」は、2月21日(日)午後、名古屋市教育館講堂において、安倍政権が「教育再生」政策の目玉として推進する「道徳教育」に関する講演会を開催しました。講師である鶴田敦子さんは、元聖心女子大学教授で、家庭科教育の世界では知らない人はいないほど有名な方です。

「特別な教科道徳」は、2016年度小学校での教科書検定が行われ、2017年度には教科書採択がなされます。もう「特別な教科道徳」の導入直前ともいえる状況ですが、果たしてこの教科とは何か、その内容を理解しておかなければ、反対も何もできません。講演では、安倍政権が進める特別教科「道徳」の狙いが整理されているので簡単に紹介します。

「本来、道徳教育では、自分自身や自分と他人の関係について考察を巡らすものですが、特別教科「道徳」では、集団や社会との関わりに重点が置かれています。一言で言えば、戦前の修身の徳目とほぼ同様の内容を設置し、子どもの到達度を評価するものです。その求める人間像は、ひたすら自己責任を自覚し、反省し、主張せず、集団のために役立つ点にあります。ここには憲法が基本的人権として認めている諸価値は皆無です。」

このように、「特別な教科道徳」の狙いは、国や企業に忠誠を誓う子どもたちを育成する「愛国心教育」の強制以外何ものでもありません。この教科は、小学校からはじまり、中学校・高校と段階的に取り組まれます。次期学習指導要領で、高校で「教科現代社会」に替わって新設される「教科公共」での「主権者教育」で完成です。いったい、どんな「主権者」が誕生するのか、想像するのも恐ろしいです。