STOP殺傷兵器輸出シンポジウム 岸田軍拡暴走「死の商人」国家への道ひらく
3月24日、労働会館で安保破棄実行委員会・平和委員会の主催でシンポジウムが行われました。会場は72名の参加者で満員。26地点からのオンライン参加もありました。布施祐仁さん(ジャーナリスト)、もとむら伸子さん(衆議院議員)、城下英一さん(平和委員会理事)の3人がパネリストを務めました。
布施祐仁さんの講演
日本は長く平和憲法の下で武器輸出を原則禁止してきましたが、安倍政権はこの方針を転換しました。2014年に閣議決定した「防衛装備移転三原則」です。岸田内閣はさらにこれを推し進め、昨年12月、運用指針の見直しに踏み切りました。ライセンス生産の武器については、これまで「アメリカ限定・部品のみ」だったわけですが、このしばりがなくなり、紛争当事国以外の第三国への輸出が可能となります。ライセンス元国への完成品輸出や、条件付で殺傷兵器搭載の武器輸出も解禁されます。岸田内閣は「国家安全保障戦略」で「官民一体となって防衛装備移転を進める」と決意を示しており、まさしく「死の商人」国家に向けて大きく舵を切ったと言えるでしょう。とりわけ、イギリス、イタリアと共同開発・生産する次期主力戦闘機を第三国輸出することについては、すでに公明党の了解を取りつけ、3月26日にも閣議決定されます。人を殺すために使われる戦闘機で、国を挙げて金儲けをしようとしているのです。これを見過ごすことはできません。
兵器の共同開発・輸出解禁にはいくつかの背景があります。国産の兵器は自衛隊にしか売れないので、大量生産もできずコストがかかります。近年、アメリカからの武器「爆買い」の影響もあり、国内の事業者が減っています。しかし、政府としては防衛産業の衰退は困るのです。
実は、武器輸出と言っても、日本の兵器は実戦で使用された経験がなく、思っているほど売れません。他国との共同生産を進めるのはそのためです。
一方、アメリカは中国との覇権争いに勝利するため同盟国の力を必要としています。AI兵器、無人機、迎撃ミサイルなど、オフセット戦略に巻き込み、日本の産業を利用したいのです。
アメリカの軍産複合体は、常に敵を作り出し、戦争を続けています。閣議決定だけで何でも決めている日本が、軍需産業の拡大でアメリカのようになっていく可能性もあります。何としてもここでくい止めないといけません。
紛争当事国は「存在しない」?
もとむら伸子衆議院議員は国会での論戦を中心に武器輸出の問題点を話しました。
「防衛装備移転三原則」では、「紛争当事国への移転となる場合」については、武器輸出ができないと定められています。そこで、今年2月21日の衆議院予算委員会において現在の紛争当事国はどこかと質問したところ、あろうことか林官房長官は「存在しないと考えております」と回答したのです。これでは、事実上どこへでも輸出できることになってしまいます。
政府は日本国内で生産しているパトリオットミサイルをライセンス元国のアメリカに輸出することを決めました。「防衛装備移転三原則」の運用指針では戦闘を行っている国への輸出はできないはずです。しかしアメリカ軍は、2018年以来今年も含めて15回の武力行使を行ったことが連邦議会に報告されています。この事実を示して問うたところ、林官房長官は「現に戦闘が行われていないと判断した」と強弁するのです。
政府与党がこんな姿勢では、平和国家日本が戦争を助長する国に変わってしまいます。
愛知は軍需産業の拠点
愛知県平和委員会の城下英一さんは、愛知の軍需産業の実態を報告しました。
日本最大の兵器メーカー三菱重工業は県内に4つの工場を持ち、戦闘機やミサイルを製造しています。三菱は国産旅客機スペースジェットの開発を断念しましたが、国と県から合わせて600億円を超える莫大な補助金を得ており、これは次期戦闘機の開発に使われるのです。
清須市には国内唯一の小銃メーカーである豊和工業があります。工場の敷地内には、住宅地に面したところに射撃場まで備えています。尾張旭市の旭精機工業は国内唯一の小口径銃弾メーカー、武豊町の日油では銃弾の火薬を製造します。ほかにもリコーエレメックス、フジワラなど多くの企業が軍需産業に加担しています。「ものづくり愛知」は兵器製造でも日本一です。愛知で製造された兵器が海外での人殺しに使われることになるのです。