韓国光州地方院裁判傍聴の感想 ~勤労挺身隊に対する三菱重工の責任追及、運動を支える人の若さに感激~
10月3日から5日まで、韓国光州地方院で行われた、裁判第4回弁論の傍聴に参加しました。
この裁判は、昨年2012年5月韓国大法院(最高裁)が日韓請求権協定において「個人請求権は消えていない」との判断を示したことをきっかけに行われているものです。現在三菱重工、新日鉄住金、不二越を相手取って集団訴訟は4つ行われています。
今回の裁判は、三菱重工を相手に光州地方裁判所に2012年10月に提訴したものです。日本で裁判をたたかった、ヤンクムドクさん、キムチュンゴンさんはじめ5人すべての原告が、合計3時間に及ぶ陳述を行い結審となりました。
裁判傍聴は、韓国語通訳などがなかったため陳述している話は解らなかったものの、名古屋の裁判で行った陳述文書をもとに傍聴しました。どの原告も、高齢に関わらず燃えるような発言に裁判席すべての人が圧倒されました。そして毅然と訴える姿勢に頭が下がる思いがしました。陳述後、今後の進行について、三菱側より書面の翻訳などを理由に裁判の引き伸ばしを図る動きもありましたが、裁判長からは「新たな事実がないかぎり、事実認定については日本の裁判ではっきりしています。裁判所が行うことは判決を下すことだ」と11月1日判決を明言しました。
滞在期間中、原告を支える市民の会より、日韓市民による交流会、5・18民主化運動の民主墓地の訪問、そして宿泊、交通、食事に至るまで、日本人訪問団の滞在すべてを負担していただきました。教育長からの連帯あいさつ、移動として教育委員会のバスが出される、地元市会議員のあいさつなどなど市民・行政が一体となって運動していることに驚きました。
同時に運動を支えている、若い世代の多さに感動しました。裁判傍聴は、地元高校生が自主的に参加し、立ち見はもちろん、廊下にあふれ出し待っている生徒が多数いました。関係者の方からは「授業扱いになる」との話も聞ききましたが、あくまで生徒が自主的に参加しているもので全体として150名ほどでした。そして市民の会を支える運営の中心は、事務局長のイググォンさんをはじめ、私自身と同世代の30代、40代が中心です。そのみなさんの職業もタクシー運転手、学校の教員、議員候補者など多彩な顔ぶれでした。夜の懇親会では、市民の会の運動、日韓の民主運動、政治の話題や子育ての話題などを話し合いました。
みなさんからは「数日前から裁判が気になり、気持ちがフワフワしいた」「今日の裁判は、大学受験の結果発表を待つぐらい緊張した」などの熱い思いも語りあい、日本では、空白となっている同世代の活動家と話し合えたことは本当にうれしく心温まるものでありました。同時に日本の支援する会の高齢化についても率直に指摘され、これからの重要な課題であると改めて痛感するものとなりました。
また市民の会から、名古屋に訪問団を送っている高校生との懐かしい再会もなされました。一人は、今年の訪問団の中心メンバーで、平和のための戦争展会場で会った以来でした。もう一人は2年前ホームスティした当時高校生の女の子です。大学生になった彼女は、市民の会の運営委員で奮闘しています。「名古屋の訪問や、市民の会の参加を通じて人生観が変わった」と話しており、少なくない青年の成長があることに頼もしさを感じ、名古屋でも多くの青年に広げていかなければと思いました。これらの交流を通じて、韓国市民の運動の広がりと深さを感じました。
三菱重工は、設立から戦後現在に至るまで、日本政府と一体に軍事開発、研究そして生産を行っている企業です。中国人の強制連行、強制労働させた鹿島建設などありますが、よりおおきな戦争責任を三菱重工業は持っていると考えます。戦争責任をいまだ認めず謝罪さえしない三菱重工の態度を改めさせるたたかいは、原告のたたかいではなく日本人としてのたたかいだと痛感する裁判傍聴となりました。 (矢野創)