パトリオットミサイルをアメリカに輸出
岸田政権は2023年12月22日、「防衛装備移転三原則」を改定し、地対空迎撃ミサイル「パトリオット」をアメリカに輸出する方針を決定しました。完成品のライセンス兵器の輸出は初めてです。
パトリオットは
米レイセオン社が開発した防空用地対空ミサイルです。レーダーや射撃管制装置、発射機などから構成され、世界で最も先進的なミサイル防衛システムのひとつと言われています。パトリオットミサイルは2種類あり、目標とする対象物によって使い分けます
- PAC2 戦闘機や巡航ミサイル
- PAC3 超高速滑空弾(マッハ5以上)
アメリカに輸出するのは、主にPAC2です。アメリカはウクライナへの支援でパトリオットを供出しており、不足した国内分を輸入で補充しようとしています。その結果、わが国は間接的に戦争当事国へ武器輸出を行うことになります。7月末に行われた日米安全保障協議委員会「日米2+2」では、最新のPAC3MSEやアムラームの製造輸出も約束しました。
パトリオットミサイルPAC2・PAC3は、三菱重工小牧北工場(名古屋誘導推進システム製作所)でライセンス生産しています
日英伊共同開発の次世代戦闘機とは
日本、イギリス、イタリアによる次期戦闘機の共同開発・生産・輸出を推進するための政府間機関「グローバル戦闘航空プログラム」(GCAP)の政府間機関の設立する条約(GIGO)が承認されました。(2024年5月)
第6世代戦闘機とは
今回共同で開発する戦闘機は、第6世代戦闘機と呼ばれます
◆第5世代戦闘機 F-35、F-22
「敵よりも先に発見し、先に撃墜する」
・ステルス性能 …敵のレーダーに見つからない
・データリンク …情報処理の高速化と共有
・スーパークルーズ …超音速での巡航
◆第6世代戦闘機 これに加え
・高度ネットワーク …無人機との連動・攻撃
・ハイパワーレーダー …敵をより早く発見
・航空優勢(制空権) …敵戦闘機だけでなく、ミサイルの飛来も防ぐ態勢
・マルチロール …多機能、戦闘・爆撃共用機等
・より高度なステルス性
今後、戦闘機と同じように飛行し、ミサイル攻撃のできる無人攻撃機の開発が「日米豪」で進められる。
参加企業
🔷イギリス
・BAE
・ロールス・ロイス
・レオナルドUK
🔷イタリア
・レオナルド
・アヴィオ エアロ
・MBDA
🔷日本
・三菱重工
・IHI
・三菱電機
日本はF-2支援戦闘機 91機を更新予定
三菱重工は炭素繊維を中心とした機体本体、IHIはエンジン、三菱電機はレーダー、電子光学、電子戦分野を担当
次期戦闘機 第三国への輸出を容認
3/26 閣議決定 6/5 GIGO 条約承認
「歯止め」として
・日本が「防衛装備・技術移転協定」を結ぶ15ヶ国に限る
・戦闘が行われている国には輸出しない
・次期戦闘機に限る
実際は「歯止め」にはならない
▶ 殺傷武器の最たるものである戦闘機の輸出を認めれば、他の殺傷兵器輸出のハードルは下がる。
▶ 国会を通さず閣議だけで決めており、他の兵器も次々に承認する可能性が高い
防衛装備・技術移転協定を結ぶ15 ヶ国
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア
オーストラリア、インド、フィリピン、マレーシア
インドネシア、ベトナム、タイ、スウェーデン
アラブ首長国連邦(UAE)、シンガポール
次期戦闘機の開発は他国が先行
アメリカ 次世代航空優勢(NGAD)
・有人機と無人機を組み合わせ、情報収集と共有、攻撃を組み合わせた第6 世代戦闘機
・2022 年には試験飛行成功
・2030 年から配備予定
◆だからアメリカは日英伊計画に加わらなかった
独・仏・西 +ベルギー 将来戦闘航空システム(FCAS) 次世代戦闘機(NGF)
・有人戦闘機と無人機を組み合わせた第6 世代戦闘機
・2027 年の初飛行をめざす
戦闘機を開発する西側・EU諸国とその影響下の国、非同盟の東南アジア諸国 → 販路の拡大をめざす
防衛装備移転三原則の見直し・緩和
武器輸出三原則(1967 年・佐藤内閣)
① 共産圏
② 国連決議で禁止されている国
③ 国際紛争当事国 には輸出を認めない
武器輸出に関する政府統一見解(1976 年・三木内閣)
三原則地域には武器の輸出は認めない 輸出を原則禁止に
憲法、外為法等の精神にのっとり、武器の輸出は慎む
防衛装備移転三原則(2014 年・安倍内閣)
武器の輸出入を基本的に認める 武器輸出→防衛装備品移転
「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型に限定
防衛装備移転三原則見直し(2023 年・岸田内閣)
5類型に該当すれば、殺傷兵器の輸出も可能に
ライセンス武器の輸出も承認 完成品の輸出も認める
武器輸出推進・「死の商人」国家へ
安保3 文書 「防衛力整備計画」
2022 年12 月閣議決定
・「軍需産業は防衛力そのもの」と位置づけ、国による装備品(武器)輸出を推進と明記
政府安全保障能力強化支援(OSA)
2022年12月 国家安全保障戦略
2023年11月 施策発表
・同志国の安全保障上のニーズに応え、資機材の供与やインフラの整備等を行う。軍等が裨益者となる新たな無償による資金協力の枠組み(外務省)
・開発途上国の経済社会開発を目的とする政府開発援助(ODA)とは別もの。日本の武器・装備品を無償で提供.2023 年実績 20億円
▶フィリピン 沿岸監視レーダーシステム(三菱電機)6億円 ▶バングラディシュ 警備艇 5.75億円
▶マレージア 警戒監視用機材 4億円 ▶フィジー 警備艇 4億円
2024 年度予算 50億円に増額 ベトナムやジブチ、モンゴル、インドネシアなど6 ヶ国が候補
軍需産業支援法(防衛産業基盤強化法)
2023 年6 月成立
・国の財政支援を通じて、防衛装備品の海外輸出を促進
・事業継続が困難となった企業の製造ラインの国有化を可能にする
・情報漏洩に刑事罰
ライセンス武器の輸出承認 2023 年11 月
・日本国内で製造した「ライセンス」武器をライセンス元と第3 国への移転を容認(8 ヶ国79 品目)
・事業継続が困難となった企業の製造ラインの国有化を可能にする → 第1 号が米国へのパトリオット輸出
日米首脳会談/日米2+2
パトリオット、アムラームの米輸出、新型ミサイルや次期練習機の共同開発約束