三宅裕一郎さん講演 世論の力で日米地位協定改定を
9月22日、愛知県平和委員会は「日米地位協定の抜本改定を求める署名運動を成功させよう!」と、民主会館で学習会を開催しました。三宅裕一郎さん(日本福祉大学教授)が「日米地位協定の問題点と日米安保の実態」と題し、協定の具体的な中身や歴史的な背景にまで踏み込んだ講演を行い、オンラインを含め50人が参加しました。内容の一部を紹介します。
前沖縄県知事の翁長さんが2018年7月にこう発言しています。「今の日本の米国に対しての従属は、日本国憲法の上に日米地位協定があって、国会の上に日米合同委員会がある。この2つの状況の中で日本はアメリカに対して何も言えない状況がある」、まさにこの言葉に日米の関係が集約されています。
ある国の軍隊が他国に駐留する際に、その関係者が受ける権利や待遇、国内法の適用などについて「地位協定」を結びます。2015年の報告書によると、アメリカは世界の115カ国と地位協定を締結しています。
日米地位協定は、1952年4月に旧日米安保条約と共に結ばれた日米行政協定が前身です。1960年の日米安保条約と共に改定されていますが、実は日本占領期からの米軍の特権をほぼ維持する内容です。その基本的な骨格は以下の3点です。①日本全土での米軍に対する基地の提供と米軍による自由な利用、②米軍による基地の排他的(独占的)な管理権、③アメリカの刑事裁判権優位による米軍・米軍属の特権的地位の確保。
ですから、米軍が認めない限り、日本が望んでも米軍基地・施設の返還や縮小は実現せず、米軍が起こした事件・事故の捜査や責任追及ができないことになっています。さらには、日本の領空内でも米軍に優先権を与えており、国際法の大原則である「領域主権」さえ放棄しています。米軍基地にかかる費用を日本側が分担することも規定されており、これが「思いやり予算」の根拠へと拡大解釈されています。
国際法上、主権国家の領域内においては国内法令を適用するのが原則であり、アメリカ国務省の報告書でも認められています。しかし、日本政府は米軍に対する日本国内法令の適用を「例外」としており、これまで強く要求することもしていません。
国家の主権を主張するより、アメリカとの対立を避けようとする異常な姿勢をとり続けているのです。
しかし、日本政府の態度がどうであれ、私たちはあきらめてはいけません。タイでは1976年、イラクでは2011年に、世論の反発で米軍が撤退しています。日本と同様にひどい協定を結んでいた韓国でも、米兵の凶悪犯罪に対する国民の強い怒りがあり、2001年から段階的にアメリカとの地位協定が改定されています。ドイツでも、国内法の適用や基地内への立ち入り権限など、地位協定の見直しに成功しているのです。
この講演を受け、平和委員会矢野事務局長が名古屋市議会議長宛の署名「日本の法律を在日米軍にも守らせる意見書提出を求める請願」を提起しました。