自治体にペナルティなし 自衛隊への名簿提供問題
安保法制の成立以後、自衛官の志願者は減っており、2023年度には採用計画達成率51%と過去最低になっています。こうした状況を背景に、防衛省は募集活動のため自治体に名簿提供・閲覧の要請を強めており、全国で多くの市区町村(愛知県は54自治体中52)が住民基本台帳の個人4情報(氏名、生年月日、性別、住所)の提供に応じています。
これはプライバシー権の侵害であることはもちろん、武力行使への服従義務をもつ自衛隊の実態が隠されたまま若者が勧誘にさらされているのも問題です。情報提供の法的根拠はあいまいであり、自衛隊は、自衛隊法97条と同施行令120条の「資料の提出を求めることができる」をあげていますが、自治体に要請「できる」だけです。
2019年2月の衆議院予算委員会で、安倍首相(当時)は自衛官の募集について「6割以上の自治体が協力を拒否している」と、苦言を呈しました。これを受け、防衛省・総務省は、「個人4情報の提供については防衛大臣が市区町村長に対し求めることができ、住民基本台帳法上、特段の問題は生じない」と通知しています。これも「できる」だけで、自治体の義務とはしていません。
全国で情報提供への反対運動が強まるなか、日本平和委員会は3月24日、名簿提供要請の中止を求め、防衛省に申し入れを行いました。これに対し、防衛省担当者は「名簿提供、閲覧とも自治体に応じる義務はなく、応じない場合のペナルティもない」と明言しました。ですから、私たちはこれまで通り、「自衛隊に情報提供をしない」ことを市区町村に求めていくべきなのです。
自衛隊に情報提供をしている自治体は、「除外申請書」を提出すれば情報提供をしないとしており、市区町村のウェブサイトから書式のダウンロードや申請が可能になっています。現時点では、個人が自衛隊への情報提供を拒否するにはこの方法しかありません。しかし、申請しなければ勝手に個人情報を差し出してしまうこと自体が不条理なのではないでしょうか。