高江訴訟判決 原告の請求をことごとく棄却

3/18 名古屋地裁前

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」――法廷に響いた裁判長の言葉はこれのみ。あまりのあっけなさに、傍聴席の人々は顔を見合わせるばかりでした。
 
3月18日に名古屋地裁で開かれた「高江への愛知県警機動隊派遣違法訴訟」の判決言い渡しは、折りからの新型コロナの影響から傍聴席数が極端に制限され、26人のみが傍聴するという異例の状況で行われました。本訴訟は、沖縄・高江の北部訓練場ヘリパッド工事に対する反対住民の排除のために愛知県警機動隊を派遣したことが警察法違反であるとして、愛知県民206人が提訴したもので、派遣決定の違法性・派遣の実態の違法性・県警本部長の専決の故意または重大な過失などについて争われたものです。
 
閉廷後の記者会見・報告集会で明らかにされた判決文は、資料を含め82ページに及びます。長谷川一裕弁護団事務局長が「原告の請求をことごとく棄却」と言い表す判決の内容は、①都道府県警察が主体の原則を踏み外した警察庁主導の派遣要請を「事前通知は沖縄県警への援助を円滑にするため」とし、②検問・写真撮影、テント・車両の撤去、抗議住民の排除など警察の違法活動には、道路交通法違反が威力業務妨害をあげて正当化、③平和的生存権・環境権・抵抗権については、「抽象的なもので具体的な権利ではない」と切り捨て、④愛知県警本部長の専決による派遣決定には、「異例または重要な案件」であるかどうかの点で原告の主張を一部認めたものの、公安委員会での事後報告で異論がなかったことをもって承認されたものとする――となっています。
 
判決に対して、大脇雅子弁護団長は「背筋が凍るような権力的判決」と憤り、中谷雄二弁護士は「住民がたたかわざるを得ない必然性に何ら触れていない」と糾弾。具志堅邦子原告代表は「極めて空しい判決。沖縄と本土をつなぐたたかいは始まったばかり。決してあきらめない」と決意を新たにしました。
 
判決後に発表された「弁護団・原告団共同声明」は、「沖縄県民の基本的人権が侵害され続け、日本国憲法の平和主義が脅かされている現実に対して配慮を払った形跡がみじんもない」と判決を批判し、「速やかに控訴の手続きをとり、名古屋高等裁判所での新たなたたかいに臨む」と今後の展望を示しています。更にヘリパッド撤去・新基地建設阻止のためには「世論に広く訴え、政治を変える以外に道はない」と訴え、「引き続き、基地の無い平和な沖縄をめざす沖縄県民と連帯してたたかう」決意表明を明らかにしました。