記念講演 「黒い雨」訴訟の本質~核被害者の救済に向けて~

平和行政に大きく影響をあたえ、愛知県内をめぐる被爆者行脚

10/15 保険医協会伏見会議室

あいち被爆者支援ネットワークは、10月15日、被爆者行脚をすすめるための事前学習会と「黒い雨」被爆者の学習会を開催、オンラインの参加も含め約50名の参加でした。

今年の被爆者行脚は10月25日から始まります。コロナ禍の2年間は懇談をする自治体を絞っていましたが、今年は、すべての自治体と懇談をすることにしています。被爆者を先頭にした実りある懇談にするために、これまでの被爆者行脚の成果や非核平和行政、被爆者施策の実態を学び、被爆者を支えて行脚を成功させましょうと意思統一を図りました。

次に、「黒い雨」訴訟(集英社新書)の著者の小山美砂さん(毎日新聞記者)に、「黒い雨」訴訟の本質~核被害者の救済に向けて~と題して講演をしていただきました。

小山さんは、「黒い雨」訴訟原告の高東さんの「黒い雨の問題ってね、

貧乏との闘いでもある。病気で十分働けなくなって、お金が残るはずがない。国が勝手に戦争をして、病気だらけの人生を放っておいた。黒い雨で被ばくをして病気のひどい人は死ぬ道しかないような気がする」という言葉に、被害を軽視していた自分の姿勢を猛省し、取材を開始されました。(なお、「黒い雨」は放射性降下物の総称を意味し、灰やちりも含みます)

「黒い雨」被爆者は、理不尽な線引きや、「黒い雨」に対する差別、内部被ばくが軽視されてきた実態などとたたかってこられました。増田雨域や大瀧雨域などにより、調査も進みましたが、援護拡大を阻んできたのは、国がいう「科学的・合理的な根拠」が必要との言葉です。

被爆者「援護」法に基づく援護のステップには、①被爆者健康手帳の交付(「被爆者」)②健康管理手当の支給③原爆症の認定の3ステップがあります。元々は、被ばくした可能性があればケアして「不安の一掃」に努めるべき、潜在化している

被爆の影響に対し、「不安」を感じている人が、被爆者との考え方がありましたが、1980年の原爆被爆者対策基本問題懇談会の報告書から、この考え方が否定されていくようになりました。

「黒い雨」被爆者の皆さんは、国を相手にした裁判で、疑わしきは救済の精神を支持した広島地裁・高裁の判決を勝ち取りました。この判決により、国は「黒い雨」被爆者の救済に動いていますが、結局は、「科学的・合理的根拠」に固執した姿勢は変わらず、被爆者認定に病気の発症を求めています。この壁を突破すること、多くの黒い雨被爆者の救済に全国で取り組むべきだと強く感じた講演でした。この講演の模様はYouTubeで公開する予定です。