平和連続市民講座 三宅裕一郎教授 戦争のリアルを語る

7/2 市民講座 三宅裕一郎さん

「『自衛』という観念は、それ自体抗いがたい『正当性』を有しているが、しかし現実には、軍事力行使の敷居を低める『便法』として用いられ、軍事テクノロジーが進展すればするほどその傾向は一層強まる危険性がある」―7月2日(日)、第2回目となる「平和連続市民講座」が、民主会館2階会議室で行われ、日本福祉大学教授の三宅裕一郎さんによる講演は、県平和委員会定期大会の記念講演も兼ねて開催しました。

「大軍拡路線の現情勢」と題して講演した三宅さんは、まず「安保3文書」の危険性を語ります。政府は、長射程ミサイルをはじめとした敵基地攻撃能力の保有や、5年間で43兆円・GDP費2%の軍拡をしてもなお、「専守防衛」を言い繕いつつ、「実際にはそれらを『換骨奪胎』させてアメリカのニーズに合わせた軍拡をすすめようとしている」と批判するのです。

「そのアメリカのニーズとは何か?それは米軍の軍事戦略から浮かび上がります」と三宅さんは強調し、その中心は対中国作戦に同盟国を動員し、自衛隊を最前線に送り出していく危険性を指摘します。アメリカは、「自らの相互運用性を高め高度な戦闘能力を向上させ展開させるために、同盟国と共に行動する」との米戦略文書を紹介しつつ、「今回の安保3文書の根底には、アメリカの軍事負担を日本をはじめとする同盟国に肩代わりさせる強いニーズが貫流しており、今回の文書はそれと軸を一にする忠実な内容になっている」と、その本質を明らかにするのです。

続いて三宅さんは、「専守防衛」と「敵基地攻撃」の間の矛盾があると指摘します。「専守防衛」は相手から武力攻撃を受けたとき、はじめて武力行使する、またその態様も自衛他のための必要最小限にとどめる―それが今回、相手国の中枢部まで攻撃が可能という。「『自衛』の内実は限りなく違法な『先制攻撃』に接近することになるのではないか」と憤るのです。その違法な先制攻撃さえも、アメリカでは軍事テクノロジーの進展によって、「自衛」の名によって正当化する発想がある―おぞましい事実を紹介するのです。

最後に、「軍事によらない平和の実現のために何をするべきか?」と問題提起します。そして三宅さんは、「政治を私たちがコントロールする」ことが大切だとして、①軍拡よりも戦争させないための選択、②共感の得られる表現力で市民に伝える、③「不断の外交力」が持続可能な安全保障につながると3つの点を強調しました。合わせて、「戦争がはじまれば、私たちは当事者になるというリアル」を自覚する時として、国民保護法制によって民間も含めた戦争動員体制はすでに具体化されており、その危険性を広く知らせる必要性を語りました。三宅さんの話しは、戦争のリアルな状況がすぐそこまで来ていることを教えてくれる講演でした。