日本平和大会国際シンポジウム アジアの平和をどうつくるか

10/4 オンライン (民主会館視聴会場)

10月4日、2025年日本平和大会の国際シンポジウムがオンラインで行われました。アメリカからは元陸軍大佐で平和を求める退役軍人の会のアン・ライトさん、韓国からフォーラム平和共感研究員のイ・ジュンキュさん、ベトナムからベトナム平和委員会のズオン・チー・ガーさん、それに日本平和委員会の川田忠明さんがオンラインで発言し、その後、参加者からの質問に答えながら交流しましした。3時間にも及ぶシンポジウムのため、内容の一部だけを紹介します。

アン・ライトさん

米国では、民主・共和両党が中国を主要な脅威とみなしています。バイデン政権は、インド太平洋地域の国々と、2国間あるいは3、4カ国とのパートナーシップ協定を結びつつ、防衛・安全保障関係の強化だけではなく、経済協力や対外援助、社会文化的関与を通じて同盟関係を注意深く深化させてきました。しかし、トランプ政権はUSAIDを解体し、中国に対応するため軍事費を増やすようアジア各国に圧力をかけ、さらに懲罰的な関税を課すなど「ハードパワー」に依存しています。こうした対立的なアプローチでは友好関係が崩れ、安全保障上の同盟関係も危うくなってしまうのです。国と国との関係は、軍事協力よりも上のレベルで構築されなければならないと思います。

イ・ジュンキュさん

現在、朝鮮半島と東アジアにおいて何より優先してすすめるべき緊急の課題は、緊張を緩和し、武力紛争や戦争を予防するための取り組みです。そのなかで民間や市民社会の役割があると思います。例えば、「民間予防外交」です。対立と紛争、国家対国家という枠の外で、紛争の予防と平和づくりを模索しつつ実践していくことです。これは、特に韓・米・日の市民社会に求

められている課題だと思います。また、反戦反核平和運動は、人権、環境、ジェンダー平等、マイノリティとの連帯、不平等に対抗する社会経済的正義などに基づく他の社会運動との連帯を通じて、「グローバルな反動」にも立ち向かわなければなりません。

この「反動」は、民主主義の危機に加えて、世界各国で右翼ポピュリズム、ファシズム運動がうごめいているということで、そのような動きを扇動し、時には便乗する政治勢力が、アメリカやヨーロッパの一部の国では最高権力者として君臨しています。これは、嫌悪と分断を助長し、対内的にも対外的にも「敵作り」にこだわり、紛争と戦争の危険性を増幅させる危険な動きなのです。

国境を越えた連帯に新たな可能性

ズオン・チー・ガーさん

長年にわたり、私たちベトナム平和委員会の加盟するベトナム友好団体連合が先頭に立つ人民組織は、国際平和運動を支援し、実践的な取り組みを行ってきました。ベトナム平和委員会は広島・長崎で開催される原水爆禁止世界大会など国際的なフォーラムに定期的に参加し、核廃絶を訴えてきました。

2019年には、日本の運動と連帯して核廃絶を求める被爆者アピールを支持する署名キャンペーンを行い、10か月で100万筆近くを集めることができました。ベトナム戦争で枯れ葉剤の被害を受けた犠牲者が200万人もいて、日本の被爆者への共感は強いのです。

平和はすべての国にとって最も貴重な価値です。壊滅的な戦争に耐えてきたベトナムはこのことをよく理解しています。今後も、日本の平和団体や世界の友人たちと連帯し、平和で安定し、繁栄する東南アジアの実現に向けて努力します。

川田忠明さん

世界では分断と対立が深まり、軍事衝突につながる危険もあります。しかし同時に、平和の秩序を再興し、強化する可能性も生まれていると考えます。

第一次トランプ政権が中国包囲の戦略を打ち出した時、東アジア諸国は、中国にもアメリカにも肩入れしない道を選び、誰も排除しない平和な東アジアを構想しました。ASEANインド太平洋構想(AOIP)です。米中ロも参加する対話と外交の枠組みです。東アジアは、大国の利害がぶつかり合い、政治体制も、宗教も、民族も多様な国が存在します。領有権問題など紛争の火種もあり、武力衝突も起きていますが、大規模な戦闘は抑えられています。その根本にあるのがこの外交努力です。

日本政府も一般的にはAOIPを支持しています。憲法9条を持つ国、唯一の戦争被爆国として、AOIPを積極的に促進する役割を果たすことが求められます。今年の原水爆禁止世界大会は「非核と平和を一体に、東アジアの平和構築にむけ、学習と対話、行動を発展」させることを呼びかけました。この活動を広げ、世論を拡大し、政治を変えていくことが必要です。日本平和大会はその重要なステップだと思います。

後半では、市民レベルでの運動や国際連帯などについて意見交換が行われました。アン・ライトさんは、ガザ救援のため世界各地から集まった人々を組織し、船団を送り出す活動をしていると報告しました。