三菱重工 要請書受け取らず

2月3日、愛知県平和委員会は、市民団体の「不戦へのネットワーク」と共同で三菱重工小牧北工場に申し入れを行いました。これは、2025年度軍事予算案に、「12式地対艦誘導弾(能力向上型)を本年度中に実戦配備する」とある問題を受け、緊急に行うことになったものです。
予算案では、敵地攻撃のための長射程ミサイル大増強に9390億円を計上。これは、敵地攻撃が具体的に戦力化されるという新たな段階に進むことを意味します。「戦争放棄」「戦力不保持」を明記した平和憲法を破壊し、戦争する国づくりへの動きともつながるきわめて危険な事態であり、到底容認できるものではありません。
申し入れ文でも指摘しましたが、市民を殺戮することで利益をあげるなどということが、経済・ビジネスの上で許されないのは当然です。
しかし、申し入れでは、事前に約束していたにも関わらず、「当社として受け取ることはしない」として三菱重工の職員は現れず、警備員である、ALSOKを通じて手渡すことになりました。まったく不誠実な態度です。ちょうどお昼時間となり、多くの職員が行きかう中、2団体の団体の要請書をマイクで読み上げた上で手渡しました。
2025年2月3日
三菱重工業社長 泉澤 清次殿
愛知県平和委員会 理事長 小島俊樹
2022年12月、政府は「安保3文書」を改定し、「敵基地攻撃能力」の保有を初めて明記しました。この中心に据えられるのが長射程ミサイルの開発生産です。歴代政府が述べてきた「専守防衛」を明らかに逸脱するとともに、先制攻撃への懸念を取り払うことができない憲法違反の兵器です。防衛省の契約実績では、2023年度の8件の内、7件が、2024年度に至っては4件すべての契約が三菱重工です。この生産拠点は、三菱重工名古屋誘導推進システム製作所(小牧北工場)です。
12式誘導弾能力向上型(地上発射型)は、24年度すでに量産体制に入り、25年度に初配備がなされる予定とされています。潜水艦発射型は25年度に量産体制に。また高速滑空弾や極超音速誘導は23年度に開発着手を、さらには25年度には製造態勢拡充もなされる予定とされています。中国を射程とする日米のミサイルが、南西諸島に配備されたとき、緊張関係は、これまでと比べものにならない深刻なものとなり戦争への危機が高まります。同時に、このような動きによって、産業と経済が軍事優先の構造に変わってしまう危険性を強く感じます。
武器輸出についても憲法の平和原則を破壊する動きが強まっています。政府はいま、殺傷能武器輸出の動き強め、次期戦闘機の共同開発を、イギリス・イタリアと進め、さらには紛争当事国であるサウジアラビアにも共同開発の参画を広げようとしています。サウジアラビアは、国際人道法違反が指摘されるイエメンでの無差別攻撃に共同開発の戦闘機を使用しました。また、イギリスのBAE社、イタリアのレオナルド社も、ジェノサイドと厳しく指摘されるイスラエルの侵攻に加担しているとノーベル平和賞受賞団体(アメリカフレンズ奉仕団)から厳しく指摘されています。
これらの動きは、「国際紛争の助長」に日本と三菱重工が直接加担しかねない事態となっていることを示すものです。いま日本政府と三菱重工が進もうとしているのは、メイド・イン・ジャパンの武器が他国の人々の命を奪うという、日本国憲法の平和理念とは真逆の道です。絶対に許されるものではありません。以上を踏まえ貴社に対して以下を要請します。
記
1、長射程ミサイルの生産・開発によって、対立国とのあらたな緊張と戦争へのリスクを高めていることを踏まえ、生産・開発の活動を中止すること。
2、イタリア・イギリスで進める次期戦闘機の共同開発と輸出の計画プログラムから脱退すること。
3、国連が定める「ビジネスと人権に関する指導原則」の「人権を尊重する企業責任」を果たすこと。イスラエルによるガザ攻撃で利益をあげていると批判される他国の企業との共同開発、取引をやめるなど国連憲章、国際法、国際人道法に違反する深刻な人権侵害への加担を回避すること。
以上