渡辺治さん講演 今度こそ軍拡問題を争点に

9/14 労働会館ホール

9月14日、革新・愛知の会で、渡辺治さん(一橋大学名誉教授)が「参院選挙後の激変する情勢と求められる革新懇運動」と題して講演しました。労働会館ホールいっぱいの180人が参加しました。ここでは平和委員会の活動に関係する部分を中心に内容を紹介します。

今回の参院選では立憲野党が停滞し、国民民主党と参政党が躍進したわけですが、本来は「石破政権が推進する軍拡・改憲が日本の平和を確保するか否か」が問わる選挙でなければならなかったのです。世界でこれだけ戦争や虐殺が起こり、日本も軍拡を進めている中で、これが選挙の争点にならなかったのは異様な事態だと思います。選挙戦での各政党党首の第一声で、軍拡にふれたのは日本共産党と社民党だけでした。

国民民主、参政、維新は、選挙公約で軍拡賛成・改憲を打ち出していましたが、この問題が全く議論されず、有権者はトータルな政党像を知って判断できませんでした。

減税で社会保障も削減に

争点になったのは、物価高を背景にした経済復興・減税問題だったのです。野党がそろって消費税減税を叫んで違いが分からなければ、一番景気のいいことを言っている新興政党に有権者の期待が集まります。

しかし、消費税は今では国の税収の一番大きな部分を占めていて、簡単になくすことはできません。国民民主や参政は、結局のところ大企業の負担を小さくして大儲けさせるという点で、新手ではありますが、新

自由主義路線であることに変わりはありません。さらに軍拡を加速化させるというのでは財源がないのです。法人税引き上げ、所得税累進課税強化、富裕層課税などをやらなければ、消費税減税など不可能です。社会保障財政を切るしか方法はなくなります。医療、介護、保育、教育などの制度改悪をすすめることになり、国民の暮らしはよくなりません。しかし、この点も参院選の争点にならず、新自由主義克服を掲げる立憲野党の優位性が示せませんでした。

参政党の本質は、天皇を中心とした権威主義的統治をめざすファッショ政党です。でも今回の選挙ではそれを隠し、減税と社会保険料引き下げで「日本人を豊かにする」「日本人ファースト」を前面に掲げ、入り口を広くすることで多くの支持者を獲得しました。そして、嘘、デマ、誇張を駆使して「敵」をつくり、差別と敵愾心をかき立て、SNSを通じて支持者を動員、洗脳していきました。ナチスやトランプの手法とつながるところがあります。ですが、減税と積極財政で日本を豊かにするという新手の新自由主義の主張と、靖国・反動史観による国民動員には、大きなギャップ、構造的な矛盾があり、容易には埋められません。

9/14 労働会館ホール

明文改憲は難しいか

参院選後、日米同盟と防衛力強化による抑止力、軍拡を制約する憲法改悪を掲げる勢力は、自公に維新、国民、参政も加わり180議席になりました。しかし参政党は、「国民主権」「平和主義」「人権保障」という近代憲法の根本原理を舶来の産物として否定しています。自公としても、こうした荒唐無稽な主張をする一派と共に明文改憲に臨むことは難しいでしょう。

それと同時に、衆議院につづき参議院でも憲法審査会長が立憲民主党になりました。選挙で、明確な消費税減税も大企業への負担増も打ち出せず、魅力を発信できなかった立憲民主党ですが、改憲・軍拡反対では私たちと歩調を合わせ、共闘できるのです。

明文改憲はできないとしても、自公政権と改憲野党は共同して実質的な改憲、戦争体制づくりを狙ってくるでしょう。今度こそ、選挙では浮上しなかった軍拡問題を争点にしなければならない。私たちの運動の真価が問われています。